日章 MASA SAITOH MASA ソロアルバム
「日章」
         (2008 BATTLE MARK [MSM-01])
 1.日章
 2.日本男児の心意気
 3.闘盛
 4.覇気 稲妻の如く
 5.荒ぶる拳
 6.少年
 7.挑み行く大和
 8.日章歌

〜アルバム解説
凱旋MARCHの活動停止から4年半の歳月を経てリリースされた、齋藤正寿のソロアルバム。
齋藤曰く「俺流の歌謡曲、日本男児」をコンセプトに据えているとのことであったが、蓋を開けてみれば
軍歌風、行進曲風の曲がアルバム中約半数を占めていたり、ブラスが目立っていたり、
しっとりしたポップな曲が収録されていたりと、一般的なメタルの型にこだわらない音楽性が散りばめられている。
かといって、決して軟弱になったわけではない。
「覇気 稲妻の如く」「荒ぶる拳」といったストレートなメタル曲は
「BRAVE BOMBER」「凱旋MARCH」に通ずる鋼の威力を発揮している。
そして、これまでと何一つ変わることなく…いやこれまで以上に
「闘志!」「前進!」と連呼する熱い歌唱、そして屈強なる漢コーラスは不変の存在感を醸し出している。
バリエーション豊富な音楽性は、バンドという形態を離れた故であり、
その本質は相変わらず、齋藤が命を賭して歌い続ける「魂の戦歌」である。
表舞台に出ることのなかった4年間に溜め込んだ想いが濃縮されたかのような歌詞、
ある種のノスタルジーを感じさせる音世界は、これまで以上の「闘う男の感情の滾りと哀愁」を湛えており、
齋藤自身の精神的なルーツに意識的に立ち返ったかのような印象さえ感じる。
4年半待ちに待った闘人は勿論のこと、熱さを胸に日々苦闘する全ての者にお勧めしたい魂の一作だ。
ちなみに、凱旋MARCHの盟友・新島弘之(B)と廣田浩三(Dr)がレコーディングに参加している。




〜楽曲解説&感想

1.日章
アルバムの冒頭を飾るインストゥルメンタル。
以前にも増して軍歌的な曲調で、火薬の匂いすら漂ってきそうな出陣の緊張感が伝わってくる。
大いくさの始まりを感じさせるブラスパートの広がりは、単に勇壮であるだけではなくある種の厳粛さすら感じる。
エンディングのトランペットがこれまた哀愁を誘い、聴き手をさらなる戦歌の世界に引き込んでいく。

2.日本男児の心意気
BON JOVI「It's my life」とACCEPTのミドルテンポのナンバーを合わせたかのようなキャッチーかつ重厚な曲調、
さらに齋藤の勇壮な行進曲テイストをこれでもかと詰め込んだ、実にストレートなナンバー。
リコーダー(?)のリフ、分厚いブラスアレンジ、ギターのメタリックな刻みのひとつひとつが、
聴き手の心に眠る鋼の心意気を目覚めさせる。
そして、キャッチーかつ熱い歌メロを野太く歌い上げる齋藤の歌唱、
「Sunrise日本」「一撃大躍進堂々前進」など、脳みそを吹き飛ばす威力の掛け声がこれでもかと響く。
「あのでっかい夕陽に身を晒し 荒野に挑み行く」と歌うサビのメロディは、
紅く沈み行く夕陽のような、内側から滾る情感で煮えたぎっているかのようだ。
眠っている日本男児の心意気を張り飛ばし目覚めさせるかのような名曲だ。

3.闘盛
タイトルは「たたかいざかり」と読む。
熱く小気味良く展開する曲調、誇りと共に挑み行く歌詞世界が濃密に交差した、
これまでにも増して勇壮なマーチングソング。
「常勝前進」「闘志旺盛」と畳み掛ける漢コーラス、軍歌をさらに高らかに響かせた歌メロが秀逸。
ブラスとギターが絶妙に絡んで重厚さを醸し出している点も聴き所であり、
曲の持つ勇壮さにさらに拍車をかけている。

4.覇気 稲妻の如く
齋藤の雄叫びに始まり、NWOBHMを想起させる直線的に斬り込んでいくギターリフが印象に残る、
アップテンポのナンバー。
歌メロはキャッチーである種歌謡曲チックだが、ヒロイックかつ闘争心旺盛な歌詞世界と相まって、
聴き手の反骨心を否応なく刺激し、そしてえもいわれぬ高揚感をもたらす。
漢臭いメタルが好きな人に強くアピールするであろう1曲だが、
ただ格好いいだけで終わらないのが齋藤の齋藤たる所以だ。
イントロから「男なら、覚悟して行けぇぇぇぇ!!」と齋藤の熱い叫びがこだまし、
漢コーラスが幾度となく「覇気稲妻」と繰り返される。
硬派で熱く、かつキャッチーさを備えた佳曲だ。

5.荒ぶる拳
ミドルテンポの、メロディ豊かな正統派メタルナンバーで、昔のANTHEMを想起させる。
重厚感溢れるギターリフ、そしてやるせない怒りを歌い上げる齋藤の歌唱が
聴き手の鋼鉄魂を強く強く鼓舞する。
JUDAS PRIEST然とした正統派メタル好きな者、やり場のない口惜しさや怒りを抱えた者の
心の秘孔(ツボ)を直撃すること間違いなしだ。

6.少年
「みんなのうた」で流れそうな、懐かしさと憂いを帯びたバラード。
アコースティックギターとストリングスが、曲の素朴な哀感を醸し出している。
無垢な少年時代と、大人になってから味わった苦悩とを振り返っていく歌詞は、
日々の生活の中で疲れ、ささくれた心にじんわりと沁みる。
特に「破壊だとか自殺だとか逃げる事だけはしなかった 
だってこの心で少年が僕を見つめているから」
という一節に、
この4年余の間にますます荒んだ事件が頻発し、芯を失いかけたこの社会への想いすら感じ取れる。
荒み疲れた多くの現代日本人にぜひ聴いて欲しい、ノスタルジックで泣ける一曲。

7.挑み行く大和
今回収録された曲の中で、一番軍歌っぽい行進曲。
前曲からの流れにやや戸惑うが、
涙を流し迷いを振り切った少年が、勇ましく闘いに挑み行く…というコンセプトなのだろう。
終始高らかに鳴り響くブラス、熱く燃え上がりなおかつ哀愁を醸し出す齋藤の歌唱、
そして子供の声、「エイ、エイ、オー!」の掛け声が、何とも言えぬ郷愁と闘争心、そして高揚感をもたらす。

8.日章歌
1曲目の「日章」の歌入りバージョン。
前曲からの連続した流れは、JUDAS PRIESTの「Defenders of the Faith」を思い出させるかのようだ。
静かに、そして力強く歌い上げる齋藤の歌唱は、戦歌を歌い続けることへの決意表明なのだろうか。
曲の持つ厳粛さをさらに引き立たせている。
変わることなき戦歌への決意、そして哀感トランペットの音色でアルバムは幕を閉じる。